第4回受賞者

回 受賞者

上田 泰己

東京大学大学院医学系研究科 教授
理化学研究所生命システム研究センター
細胞デザインコア合成生物学研究グループ
グループディレクター

推薦者 
宮園 浩平 東京大学大学院
医学系研究科長・医学部長
藤堂 具紀

地球上の多くの生物種には1日約24時間の体内時計が備わっている。体内時計を特徴づける温度補償性(周期長が温度に依存せず常に一定であること)は、1950年代に発見されたが、その仕組みは大きな謎であった。2009年に上田氏はカゼインキナーゼⅠというリン酸化の反応が体内時計周期の律則段階であることを発見した。続いて上田氏は、この酵素反応は温度に依存せずに常に一定であることを発見した。一般的な生体内の生化学反応は温度が10℃上がるとその速度は2~3倍ほど速くなることが知られており、これは驚きの発見であった。2017年に上田氏は、このリン酸化酵素が温度依存的なブレーキ機構を持つことで温度補償性が実現していることを解明した。続いてこのブレーキ機構を通常の温度依存的なリン酸化酵素に移植し、温度補償性を持つ酵素を新たに作り出すことにも成功した。

さらに上田氏は、体内時計の研究の中から、細胞から個体へと階層を登ってゆく生命現象研究方法として、全身を1細胞解像度で解析する方法の開発にも貢献した。これまで個体内の細胞の位置情報と機能情報を保持した状態で細胞を包括的に解析することは大変困難であった。この困難を解決する為に、組織を薬物処理によって透明化する方法が長年試みられてきたが、医学応用に資する技術はこれまで実現されていなかった。上田氏は、光の散乱を抑制する従来法を改善して透明度を上げると共に、生体臓器に豊富に含まれているヘモグロビン中のヘムを溶出して光の吸収を抑制する新しい透明化手法CUBICを開発した。CUBIC法は、光の吸収と散乱の問題を同時に解決することで、生物学的な応用範囲を革新的に広げることに成功し、マウス成体全身透明化を世界で初めて実現した。CUBIC法は今後、悪性腫瘍の転移・播種の進展様式の全身可視化など個体レベルでの生命現象・病理現象の解明に向けて道を拓くものであり、病理学をはじめとする医科学の各分野に対しての貢献が期待される。

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