第3回受賞者

3回 受賞者

藤堂 具紀

東京大学医科学研究所・先端医療研究センター・先端がん治療分野 教授

推薦者 
宮園 浩平 東京大学大学院 医学系研究科長・医学部長
藤堂 具紀

藤堂具紀氏は、がんのウイルス療法開発の世界的パイオニアである。
氏は脳神経外科医として活躍する一方、1995年から遺伝子工学技術を用いてウイルスゲノムを改変し、がん細胞を特異的に複製する遺伝子組換えヘルペスウイルスを利用した新しいがん治療法の開発に取り組んだ。世界初となる脳腫瘍のウイルス療法に向けて第二世代がん治療用ヘルペスウイルスのトランスレーショナルリサーチを実践した際、がん治療用ウイルスが治療効果を発揮する機序として、ウイルスが複製してがん細胞を直接破壊することに加え、その過程で、がん細胞に特異的な抗腫瘍免疫が惹起されることを見いだした。がんの局所治療が、免疫を介して全身に作用し、遠隔のがんにも治療効果をもたらすことは、これまでの放射線治療や化学療法の常識を覆す治療メカニズムとして注目され、現在ではウイルス療法における常識となっている。

 更に、ヘルペスウイルスゲノムに三重変異を加えて、抗腫瘍効果と安全性を格段に改善させた第三世代がん治療用ヘルペスウイルス(G47Δ)を世界で初めて開発し、我が国において前例のないウイルス療法の臨床開発を推進した。G47Δはがん細胞での複製能が増強し且つ特異的抗腫瘍免疫を強力に惹起するように設計され、あらゆる固形がんに有効で、がん幹細胞を効率良く破壊する。国産初となるウイルス製剤の治験薬を東京大学内のGMP製造施設で製造し、増殖型遺伝子組換えウイルスを用いた臨床試験として初めて国の承認を得た。2009年から2014年まで再発膠芽腫患者を対象とした第Ⅰ-Ⅱa相試験を実施し、G47Δの脳腫瘍内投与の安全性を証明した。2013年からは、前立腺癌と嗅神経芽細胞腫をそれぞれ対象としたG47Δの臨床試験も開始した。これらの臨床データを基に、2015年から膠芽腫を対象とした国内初のウイルス療法の「治験」を第Ⅱ相から医師主導で開始するに至った。2016年には、G47Δが厚生労働省の先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、国産初の抗がんウイルス薬としての早期承認が期待される。

 開発研究では、BACプラズミドを活用してG47Δのゲノムに任意の外来配列を短期間かつ的確に挿入可能な遺伝子組換えヘルペスウイルス作製システムを開発した。免疫刺激因子や抗血管新生因子の発現などさまざまな機能を付加したがん治療用ウイルスを次々に作製できる革新的技術であり、創薬のツールとして役立っている。氏はまた、厚生労働省の「革新的医薬品・医療機器・再生医療等製品実用化促進事業」において、ウイルス療法開発のガイドラインを策定しており、レギュラトリーサイエンスの面からも、後に続く日本のウイルス療法開発を推進している。

過去の受賞者