第1回受賞者

1回 受賞者

間野 博行

東京大学大学院医学系研究科
細胞情報学分野 教授

推薦者 中釜 斉
国立がん研究センター研究所 所長

間野 博行

間野博行氏は「各がん種における本質的な発がん原因分子」を同定し、その機能を抑制することが、極めて有効ながん分子標的治療薬開発に繋がるとの仮説を立て、がん臨床検体から直接発がん原因分子を探索する技術開発を行った。

氏は独自のテクノロジーを完成させた後、肺がん臨床検体を解析する事で、EML4-ALK融合型がん遺伝子を発見することに成功した。本来ALKは細胞増殖を正に司る酵素であるが、染色体転座の結果EML4と融合して恒常的に活性化されてしまい、強力な発がん原因分子となる。この発見は「染色体転座による発がん機構は白血病などの造血器悪性腫瘍に特異的であり、一般の固形腫瘍には存在しない」という腫瘍学の常識を覆すものであり、世界のがん研究・がん臨床に大きな驚きもって迎えられた。

この成果を受け、肺がん治療薬としてのALK阻害剤の開発競争が始まり、クリゾチニブの臨床試験では、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験において奏効率が7割に及ぶことが明らかになった。旧来の抗がん剤による肺がん治療の奏効率が2割前後であることを考えると、特効薬と言ってよい治療効果である。米国FDAは、この目覚ましい臨床試験の成果を受け、一般に必要とされる大規模第Ⅲ相臨床試験を不要として、第Ⅰ/Ⅱ相試験の結果だけで、クリゾチニブを2011年に承認した。これはEML4-ALKの報告から僅か4年後の薬剤認可であり、世界で最も有効な固形腫瘍の治療薬を、世界最速で患者に届けることに繋がった。

また氏は、肺がんがALK阻害剤に対して耐性になるメカニズムも世界に先駆けて明らかにすることに成功し、その情報を元に開発された「第2世代のALK阻害剤」が続々と臨床試験に入った。中でもアレクチニブは第I/II相臨床試験において93.5%という奏効率を示し、2014年7月に厚生労働省より肺がん治療薬として認可を受け、販売が開始された。氏らの研究は、直接世界中の何十万人ものがん患者の救命をもたらし、がんのトランスレーショナルリサーチとしては、世界で最も成功したものの一つと言える。

その後も氏は融合型RETチ口シンキナーゼ、融合型ROS1チロシンキナーゼの発見、RAC1がん遺伝子の発見など次々とがん治療標的を同定している。それだけでなく文部科学省の国家的がんプロジェクト「次世代がん研究シーズ戦略的育成プロジェクト」のリーダーとして日本のがん研究を牽引している。

これらの業績により氏は紫綬褒章をはじめ栄誉ある賞を受賞されている。

過去の受賞者